- 本記事は、2015年11月25日に開催された第1回安全運行サポーター協議会セミナーのパネルディスカッションの部の採録です。
これまでの内容:
・イントロダクション
・ワールド自興株式会社の安全と健康への取り組み
・コフジ物流株式会社の安全と健康への取り組み
・明日から現場で活かす視点
・明日から現場で活かす視点
・パネルディスカッション前編「一次予防、二次予防、三次予防」
・パネルディスカッション中編「無呼吸症候群(SAS)への取り組み」
・パネルディスカッション後編「無呼吸症候群(SAS)検査とフォロー、安全運行と健康」
無呼吸症候群(SAS)検査とフォロー
また、検査結果が出るまでの間、責任者として各人の就労可否の判断についてご経験があれば、ご教示いただけますか。(酒井一博)
次にSASと確定結果が出た場合には、ハンドルを握れないと就業規則においても定めています。(堂坂佳延)
私どもでは、過去に、運転手が脳梗塞をおこし、自らバスを降り、救急車を呼んで病院に向かった、という事例がございました。その折に、約半年程治療をし、大型バスを運転するに支障なしとの診断書が病院より出ましたが、本人と話したところ、要領を得ない部分が見受けられたので運転できる状態とは思えず、乗務をさせず、車庫待機と判断したことがあります。本人は不満で、労働基準局に訴えましたが、私の方では乗務させないという判断を覆さず、本人は退社しました。ここで問いたいのは、医者の判断により乗務が可能とされ、関係諸機関からも乗務させないのは不当とされ、実際に乗務させて事故が起きたときに、一体誰が責任をとるのか、ということです。労働基準局は、医師の診断結果で乗務に支障なしということなので、乗務させないのはけしからん、乗務させなさい、と迫るわけです。大変な苦労をしました。会場の皆さんのところでは、そのような問題が生じなければよいのですが、こういった問題について、行政の方で鑑み何か変えていくべき、工夫していくべきところなのではないかと思います。(青木正勝)
安全運行の礎、ドライバーの健康は、“管理”ではなく関心の醸成から
高柳勝二: 時間も限られてきました。少しまとめさせていただきます。
後半の話では、安全・健康への取り組みを行う折に、何か障害・弊害があるのではないかという話題もございました。点呼のときに、私がいつも思いますのは、体調は機械で確認ができるかもしれないが、ただ感情は人と人の会話からしか確認できないものではないかということです。そして乗務中、車の中でドライバーの健康が損なわれれば事故の発生につながりかねません。ですから、点呼者が「社内」でドライバーの健康を気遣うことによって「車内」での安全確保にいかにつなげるかが重要なのではないでしょうか。相手への気遣い、「ちょっと顔が赤いよ」「いつもと違って目が二重になっているよ」といった声掛けが体調把握のきっかけになると同時に、気にしているよ、というメッセージが本人の体調管理の自覚を促すことにもつながるのではないでしょうか。充分な本人の理解を得られないままの機械による体調・行動把握は、ともすれば本人にとって否定的な管理・監視と受け取られがちです。管理・監視ではなく、ドライバーへの関心・愛情である、あなたのことが気になっている、ということを伝えるべきです。そうしたことを踏まえ、最後に私から提案です。皆さんの会社で、例えば何かの記念日をつくってみる、というのはいかがでしょうか。「健康を実践する日」「健康を考える日」「健康を気遣う日」…、月に1回、健康を社員皆で意識し実践する日、相手の健康を気遣う日、それは「安全を実践する日」「安全を考える日」「安全を気遣う日」に近づいていくと思います。健康を考える日は、安全を考える日、そのような実践をされる会社さんでこそ、ドライバーの「健」康とドライバーの「安」全が図られる『健全経営』という言葉が当てはまるのではないでしょうか。
今日は第1回のセミナーでございました。今後、第2回目以降も企画予定です。本日は会場の皆様、安全と健康では、「安全」重視とお答えの方々が多かったのですが、これから「健康」にも取り組んでみませんか。ドライバーが健康でなければ、安全は確保できません。健康と安全が図られてこそ、安全運行が実現できるのではないでしょうか。
「A あんぜん」「K けんこう」「B バランス」、略して『AKB』、今日は、どうぞこれを職場にお持ち帰りいただければと思います。(会場、笑)
本日は、長らくのご清聴、ありがとうございました。
- 本記事は、2015年11月25日に開催された第1回安全運行サポーター協議会セミナーのパネルディスカッションの部の採録です。