image: 青木正勝氏(ワールド自興株式会社 代表取締役社長)

   本日は、異業種の方もいらっしゃると伺っておりますので、同業の方にとっては周知のことも含め、バス会社としての当社の安全及び健康への取組みをご紹介致します。私どもが、一般貸切旅客自動車運送業免許を取得したのは、昭和61年です。9m以内の中型バス5両でスタートしました。当時は、免許を取得するのに大変な苦難がありましたが、何とかこの時期に免許を取得することができました。現在、大小、特定旅客自動車運送事業を含めますと約40両で運行しています。本社は東京都足立区皿沼にあり、西新井大師様の近くで営業しています。営業所は、東京都品川区及び、神奈川県川崎市にございます。

   皆様ご承知のように、バスを運転するには、大型2種免許が必要です。求人面接において、以前はトラックなどの経験者が多く安心できたのですが、最近ではそうした経験なく、普通免許取得後、運転歴3年以上を経て大型2種免許を取得し、バスの運転をしたいがために面接にやってこられる方が非常に多くなっています。従って、現場に出せるまでには、見習いの時間が長くなっているのが現状です。そもそも観光バスは、毎日行き先が異なっており、見知った道を運行するわけではなく、その上、観光地となれば山道あり、ときに雪道ありと、特に運転経験が求められる職種であると私は認識しています。そうした運転技術・経験と共に、貸切観光バスは、行楽利用が多く、休日運行が多いために、業務への家族の理解・協力が特に必要な業種と考えています。

まとめ:  貸切バスのドライバーに関する特色

   さて、最近のバス業界の調査によりますと、大型2種免許を取得している方は全免許取得者の1.2%と少なく、更に60歳未満は僅か0.5%となっています。大型2種免許取得を目指す方が年々減少傾向にあることは否めません。従って、私たち貸切観光バスドライバーは、魅力ある業種にしていかなければならないと考えています。皆さんの身近な存在であるバスが、ドライバー不足のために運行できない事態を回避する対策が急務となっています。

まとめ: 大型2種免許について

   会場の皆さんに質問です。大型観光バスの車両は、一台いくらぐらいの価格か、皆さんご存知でしょうか。バスの種類も、普段関心をお持ちではないかもしれません。バスと一括りで申しますが、パーキングエリアなどで、バスが二台三台と並んでいるのをご覧になると、バスと言っても様々で、特に屋根の高さが違うことにお気づきになられるかと思います。標準的なバスで約3,000万円、屋根が高くなりますと3,500万円から4,000万円程、更に屋根の高い車両になりますと4,000万円から4,500万円程と、大変高額です。そのような高価な車両を運転し、大切なお客様の命を預かるドライバーの健康は、安全運行の上で、重要な鍵を握っていると私は考えます。

貸切バス:リスクの高い運行

   運行前の車両点検については、トラック運送事業の皆様も私どもと全く同じだと思うのですが、出庫前に車両のチェックを行います。よく私は社員に言います、「ドライバー自身がいくら健康でも、車が動かなければ何にもならない」と。日頃から自分自身の健康管理をしっかり行いながら、車両の整備・点検を怠らず、仕事に励んでいただきたいというのが、私の考えです。次に当然ながら出庫前に、一人前方に立たせ、ライトやブレーキ、方向指示器等の点検を行います。その後、始業前点呼です。私どもも非常に厳しく重点的に行っています。アルコールチェック、服装、免許証等の確認を行っています。アルコールチェックは義務化されており、出庫前、また宿泊を伴う場合にはハンディ検知器を活用して実施、そして帰庫時にと実施しています。

貸切バス:ドライバー研修及び無事故表彰: ドライバーのモチベーションアップ

   運輸行政機関より、バスドライバーの研修計画書を作成し、毎月1回は安全のための研修会を実施しなければならないと定められていますが、私どもは年間計画を立てながら、安全週間に入る直前には地元の警察にお願いし安全確認の講習会も実施しています。また実地研修については、ドライバーが待機の折にできるだけ多く集め、地元の消防署のご協力のもと消火器の扱い方講習や、急な不具合に遭遇した折のバッテリー点検の仕方をはじめ、日々の出庫前点検時に自分で各種確認できるよう学ぶ機会をつくっています。

貸切バス: 緊急時対策の実地研修

   またバスは、四季によって様々な場所へ赴きます。慣れない雪道・冬山を走行させる折には危険が伴いますので、新入社員を対象に、冬季講習として、速やかなタイヤチェーンの巻き方はじめ、雪道走行の実地研修を行っています。

貸切バス:雪道対策:冬季 実地研修

   最近のバスにお乗りになるとお気付きかと思いますが、ワンマン運行が非常に多くなっています。私どもでも、ワンマン運行の折にはドライバー自身が出発前にお客様の前でマイクを持って、ご挨拶並びに安全運行に関するお願いをします。

   次に、私ども職員の健康診断についてですが、従来より55歳以上は年に2回以上実施することを社内的に決めていましたが、関越道高速バスツアー事故以降、義務化されましたので、いまは全員に年に2回健康診断を受けさせています。日常的には、出庫前に血圧を測定させ、その結果は、個人の帳面に継続的に記録の上、運行管理者に提出させています。あまりにも大きな変化があった際には、乗務を控えることのみならず、日中の内に既定の病院で受診させ診断書を提出させるようにしています。また、運行管理者自身の具合が悪ければ、ドライバーの確認も疎かになりがちです。運行管理者についても、健康状態について報告の上、勤務しています。

貸切バス: 健康管理は安全管理: 健康こそが会社と社員と家族を守る

   健康についての取り組みは、先程申し上げた通り、全員に年に2回健康診断を実施していますが、来期は年3回に増やそうと考えているところです。また、睡眠時の問題については、薄いシートの上で眠るだけで睡眠状態が分かるという機器があることを安全運行サポーター協議会を通じ、初めて知ったので、早速当社でも取り入れ、全員のドライバーにやらせてみました。幸い大きな異常はなかったのですが、睡眠の状態がはっきりと確認できました。今後もこうしたものをどんどん活用していきたいと考えています。こうしたデータを運行管理者がコンピュータに取り込んでいくことによって、各々の睡眠状態が明確に分かるという機器がでてきていますから、今後そうした面にも経費をかけていかなければならないと感じています。

貸切バス: 運行管理者・ドライバーの健康管理は事故リスクに関わる

   また、貸切観光バスは、地方に出かけ宿泊を伴う仕事があります。昔はお酒について厳しくは言っていなかったのですが、昨今では貸切バス業界として、宿泊先での飲酒含め一切禁止しています。年に1回、社員の親睦を図るためにも泊りがけの研修を行っていますが、そのような折には存分に飲酒もさせ日頃の働きを労うと同時に、お酒の嗜み方などもさりげなく確認しています。

   私たちは、健康管理については、非常に神経を尖らせています。私どものように、車両台数が少ない中でも、乗務員が運行中交代する事態は、年に何回かあります。お客様の安全は、私たちの健康からということで、社員一同、留意していかなければならないと考えています。

貸切バス: 憧れのバスドライバーとして: 安全対策は健康管理から

   貸切観光バスの運行は、尊い人命を預かる特別な業務であることをバスドライバーは自覚を持ち、経営者は常に安全運行に徹して欲しいと思っています。

   今回の機会を活用させていただきながら、乗務員の健康管理について、今後も改善に取り組んでいく所存です。

 
 

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本記事は、2015年11月25日に開催された第1回安全運行サポーター協議会セミナーのパネルディスカッションの部の採録です。